「特に転んだわけでもないのに、膝の内側が急に痛くなった」
「歩くと膝の内側が痛み、体重をかけるのがつらい」
このような症状がある場合、内側半月板後根断裂が原因となっている可能性があります。
内側半月板後根断裂は膝関節の荷重分散機能を大きく損なうことがある損傷です。中高年の方に多く、明らかな外傷がなくても発症することがあります。
一般的な変性半月板損傷とは異なり、症例によっては半月板修復術を検討することが重要です。
1.内側半月板後根とは?
半月板は、大腿骨と脛骨の間にある線維軟骨組織で、膝にかかる荷重を分散し、関節軟骨を保護する役割を担っています。
内側半月板後根とは、内側半月板の後方部分を脛骨に固定する付着部です。
通常、半月板は荷重を受けると外側へ広がろうとしますが、前後の付着部や周囲の構造によってその逸脱が抑えられています。
ところが、後根が断裂すると、半月板が外側へ逸脱する「半月板逸脱」が生じやすくなります。
その結果、半月板の荷重分散機能が大きく低下し、関節軟骨や軟骨下骨にかかる負担が増大します。
後根断裂は、半月板の一部が傷つくだけでなく、半月板全体の機能を損なう可能性がある損傷です。
2.どのような人に起こりやすい?
内側半月板後根断裂は、特に中高年の方に多くみられます。
代表的な特徴は次のとおりです。
●明らかな大きな外傷がなくても発症する
●立ち上がる、しゃがむ、歩き始めるなどの日常動作をきっかけに発症することがある
●膝の内側に急な痛みがでる
●体重をかけると痛みが強くなる
●変形性膝関節症や下肢アライメントの(角度)変化を伴う場合がある
発症時に「膝の中で何かが切れたような感覚」や「音」を自覚することもありますが、必ずしも明確な受傷機転があるわけではありません。
また、骨粗鬆症などを背景とする膝の軟骨下脆弱性骨折を合併することがあり、急な荷重時痛がある場合には注意が必要です。
3.どのように診断する?
診断では、問診・身体診察に加えて画像検査を行います。
①レントゲン検査
レントゲンでは半月板そのものを直接確認することはできませんが、関節裂隙の狭小化、骨の変形、下肢アライメントなどを評価できます。
変形性膝関節症の進行度や、関節温存手術を検討する際の判断材料になります。
②MRI検査
MRIは後根断裂の診断に重要な検査です。後根断裂に特徴的ないくつかの所見があるかを評価します。
他にも、半月板逸脱の程度や関節軟骨の状態、軟骨下骨の骨髄浮腫・骨折所見なども重要です。
なお、MRIで後根断裂が疑われても、症状やレントゲン検査と総合的に評価する必要があります。
4.治療方法は?
治療方針は、年齢だけで決めるのではなく、活動性、軟骨損傷の程度、変形性膝関節症の進行度、半月板逸脱、下肢アライメント、軟骨下骨の状態などを踏まえて判断します。
①保存療法
関節症が進行している場合や、修復術の適応が乏しい場合などには、保存療法を検討します。
●痛みが強い時期の荷重調整
●必要に応じた杖や松葉づえなどの使用
●消炎鎮痛薬などによる疼痛管理
●症状に応じたリハビリテーション
●体重管理や日常生活動作の調整
特に軟骨下脆弱性骨折を合併している場合には、荷重によって病態が悪化する可能性があるため、通常の変性半月板損傷と同じように運動を進めず、骨の状態を踏まえた荷重管理が必要です。
②半月板後根修復術
関節軟骨の状態が比較的保たれており、断裂形態や患者さんの状態から修復が期待できる場合には、手術を検討します。
後根を修復することで、半月板の機能回復や逸脱の軽減、関節症の進行抑制が期待されます。
ただし、修復すれば必ず正常な機能が回復するわけではなく、治療状況や長期的な関節症進行には個人差があります。術後は、修復部の治癒を考慮した荷重制限やリハビリテーションが必要です。
③骨切り術・人工膝関節置換術など
内反変形(O脚)が強い場合には、高位脛骨骨切り術などを含めて検討することがあります。
一方、関節軟骨の損傷や変形性膝関節症が高度に進行している場合には、半月板修復術の効果が限定的となり、人工膝関節置換術などの治療選択肢となることもあります。
5.まとめ
内側半月板後根断裂は、中高年の方に多く、明らかな外傷がなくても膝の内側に急な痛みが生じることがあります。
後根が断裂すると半月板の荷重分散機能が大きく低下し、半月板逸脱や軟骨下骨の負担増加を招く可能性があります。
治療は、保存療法だけでなく、症例によっては半月板修復術や骨切り術、人工膝関節置換術などを検討します。
膝の内側に急な痛みがでた場合や、荷重時痛が続く場合には、単なる変形性膝関節症や一般的な半月板損傷と決めつけず、整形外科で診察を受けることをおすすめします。
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